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2023.04.21

イベント・セミナー情報

SXSW 2023視察レポート

はじめに

フューチャースピリッツにて、グローバル事業を担当している神戸です。営業本部のマネージャでもあるので、国内外両方の売上に責任を負う立場です。

ITという本質的にボーダーレスなサービスを扱っている当社では、常にグローバルな情報収集を行っています。マレーシア、タイに拠点がある関係で東南アジアの情報が最も集積していますが、世界で最も情報技術の発展が進んでいる国といえば、やはりアメリカ合衆国です。最近パートナーとしてアドバンストティアに昇格したアマゾン ウェブ サービス(AWS)も言わずもがなアメリカ企業であるAmazonが始めた事業ですし、もとをただせばインターネット自体、アメリカ起源の情報通信技術ですね。

そういうわけで、当社では、アメリカを中心に欧米の先進的な技術動向にアンテナを張っています。網羅的かつ継続的に情報を得ていくことは実務上とても難しいですが、大規模なイベントへの参加は、最新で「尖った」情報を仕入れるにはいい機会です。

今回は、そうした活動の一環として実施した、アメリカテキサス州オースティンで開催されたSXSW2023への訪問報告をこちらにレポートさせて頂きます。

SXSWとは

SXSWは、South by Southwestの略称です。1987年に初めて開催されたこのイベントは、毎年アメリカ合衆国テキサス州オースティンで開催される、音楽、映画、インタラクティブメディアのコンファレンスとフェスティバルです。世界中から才能あるアーティスト、クリエイター、専門家たちが集まり、知識や技術、アイデアを共有し合う場となっています。

SXSWは、下記のようなカテゴリに分かれて開催されています。

音楽:数千ものバンドやアーティストが世界中から集まり、数百のライブ会場でパフォーマンスを行います。また、音楽業界の専門家たちがパネルディスカッションや講演を行う場も提供されています。

映画:世界中の映画製作者が独立系映画やドキュメンタリー、短編映画、音楽ビデオを上映し、その後のQ&Aセッションやディスカッションも行われます。さらに、映画業界の専門家たちが、製作や技術、マーケティングなどのトピックを扱うパネルや講演も開催されます。

インタラクティブ:デジタル時代の技術革新やインターネット、ゲーム産業を中心に、パネルディスカッション、講演、ワークショップ、デモが開催されます。テクノロジー、デザイン、ビジネス、社会貢献など多岐にわたるトピックが取り上げられます。

SXSWはクリエイティブ産業の潮流を感じることができるイベントとして、国際的な評価も高く、新しい才能や革新的なプロジェクトを発掘する機会となっています。期間中、オースティンのダウンタウンは、街を挙げてのお祭り状態です。イベント入場待ちで並んでいた時、近くにいた人がカリフォルニアのテック企業のエンジニアで、昨年訪れたという屋久島について思い出話に花が咲く――というような出会いもあり、刺激的な時間を過ごすことができました(私は1997年と2010年に屋久島登山を体験)。

SXSW 2023往訪のコメンタリー

私は2016年12月にフューチャースピリッツに入社して、その数ヶ月後、2017年3月に初めてSXSW 2017に参加しました。

それからしばらく経ち、コロナウィルス禍を挟んで久々のアメリカ訪問、SXSW詣でとなりました。

成田国際空港から、サンフランシスコとデンバー経由で降り立つ、テキサス州オースティン。人口およそ96万人の州都です。

SXSWは、オースティンのダウンタウン、Austin Convention Centerを中心に開催されます。コロナ前の実績では、106ヶ国からのべ41万人以上がオースティンに集ったそうです。SXSW2023の来場者統計は現時点で確認していませんが、肌感覚では、相当な数のゲストがアメリカ内外から会場に来ていたように思います。

私の旅程では、3月11日(土)にオースティンに到着し、翌12日(日)から16日(木)までSXSW 2023会場で活動する予定でした。

以下、主に往訪、聴講したイベントを列記します。

3/12(日)
Creative Industries Expo [展示会]
SXSW Pitch: Innovative World Technologies [ピッチイベント]

3/13(月)
Creative Industries Expo [展示会]
Road to Electrification: Volkswagen's ID.4 and upcoming ID.Buzz[展示]
Studio Vimeo [展示]
Web3, Metaverse and Modern Storytelling[パネルディスカッション]
Generative AI: Where Creative and Tech Innovation Meet [パネルディスカッション]

3/14(火)
Creative Industries Expo [展示会]
7 Surprising Secrets of Successful Unicorns [講演]
The Great Metaverse of China [講演]

3/15(水)
Creative Industries Expo [展示会]
Is Jordan the Middle East’s Silicon Valley? [講演]

3/16(木)
Helen Ganya [音楽ライブ]
Beatenberg [音楽ライブ]
Featured Session: Don't Be a Drag, Just Be a Queen [パネルディスカッション]

 

それぞれ詳述していくと文字数が果てしなく増えてしまいますので、印象的だったもののみ簡単にまとめてみます。

Creative Industries Expoは、日本と同様の展示会です。日本の一般的なIT系展示会と異なるのは、政府レベルの産業誘致機関が多数ブースを出していることや、特定非営利活動法人(NPO法人) 、非政府組織(NGO) の出展も目立つことでしょう。SXSW 2017では「屠殺される家畜の気持ちになれるVR」のような尖りすぎた展示を体験させられたものですが、今回は、そこまで強烈なものは見当たりませんでした。

イベントのメインスポンサーでもあるSlackが、大規模なブースをAustin Convention Center内のEXPO会場と屋外の両方に出していました。グローバルなテック企業で目立ったのはそれくらいで、いわゆるGAFAM (Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft) クラスの巨大企業の存在感は相対的に薄かった印象です。時期的にも、多くのIT企業で大規模なレイオフが発表されていた時期と被ります。

逆に、意外だったのが日系企業の出展社数。日本の大手広告代理店やキー局が多く出ており、VR関連の出展で人気を博していました。

愛知県の工科系大学が学生を中心にブースを出展し、ゲスト相手に立派に英語で応接している様子には感銘を覚えました。

スタートアップのピッチイベントでは、環境改善系のスタートアップが目立っていたように感じました。アメリカのブームは、数年置いて日本に伝播するといわれています。日本でも、これからさらに環境改善系の事業が芽吹いてくるかもしれません。

"Generative AI: Where Creative and Tech Innovation Meet"は、有料画像素材大手のShutterstockがリードするパネルディスカッションでした。Generative AIは注目を浴びるトピックでしたが、逆にNFT関連のブースはあまり多くは見当たらず。

2022年のIT業界では、NFTはすでに衰退し、今後はAIの期待感が上がっていくという声もありました。幅広い意味でのAIはすでに啓発期に入っており、利用が一般的になってきています。

"7 Surprising Secrets of Successful Unicorns"は、アメリカのスタートアップ向けコーチAlisa Cohnの講演。「成功する人々は、成功しない人々がやりたがらないことをする」という明快なメッセージが心に響きました。

"Is Jordan the Middle East’s Silicon Valley?"では、ヨルダンの企業経営者3人が登壇し、自社や自国のアピールをしていきました。ドイツ、フランス、ポルトガル、香港等の産業誘致機関と並んでひときわ大きなブースを構えていたヨルダンですが、実はかなり印象に残りました。中東・中近東の進出先といえばイスラエルとトルコがリスト上位に来そうなものですが、「ヨルダン実はアリかも…」と感じました。

総じて、世界の最先端、アメリカのトレンド、それらと日本のギャップを学ぶのに最適なイベントです。一般的ないわゆる展示会と異なり、映画や音楽も多数の公演が期間中実施されています。右脳と左脳両面から刺激を受けられる稀有な機会を、今回堪能してきました。

AI関連の技術が既に啓発期、もっといえば普及期に入っていることを感じました。現在日本ではChatGPTの活用セミナーが百花繚乱ですが、SXSW 2023では、とりたててChatGPTの活用法をアピールするよりも、新たなAIドリブンのサービスを開発していこうという意気込みを各所で感じました。

SXSW2017の時はSaaSやシステム開発のブース(いわば短期的な売上を志向する展示)も多く見られましたが、今回は、どちらかというと技術展示の傾向が高かったように感じました。

ちなみに、入場券の種類が複数あるのですが、安い方のチケットで入場すると、特に映画や音楽は優先入場できるゲスト(高い方のチケットを買い、入場予約している方々)だけで会場が埋まってしまい、視聴できないことが多々ありました。次回参加する際は、高めのチケットで入場しようと心に誓った次第です。

おまけ: テキサス州オースティンはこんな場所

アメリカ滞在中、日中はずっとSXSW 2023にかかりきりでした。そして夜は、日本時間の日中に開催される会議等にしばしば参加したり。日本とオースティンの時差は14時間あり、日本の14時がオースティンの0時です(日本の9時は、オースティンの前日19時)。(正確には、サマータイム期間中の時差が14時間で、サマータイムでない時期は15時間になります。ちょうどSXSW 2023の期間中に、サマータイムへの切り替えが生じます。)

そういうわけで、出張中は昼も夜もなく稼働していました。とてもとても観光など――といいたいところですが、イベントの合間には、多少市街を散策することができました。

Austin Convention Centerから少し歩くと、コロラド川の流れに行き当たります。オースティンの市内は完全に都市ですが、コロラド川から遠くを見通した景観は、「テキサス」から何となく思い浮かべる、広大な大自然を想起させるものがありました。

SXSW 2017の頃はAustinではUberが使えなかったのですが、今は普通に利用できます。Teslaに載った地元ドライバーに教えてもらったおいしいテキサスBBQレストランが Terry Back’s Barbecue というお店。

アメリカンサイズ!同行者と2人で、合わせて1kg近くお肉を頂きました。翌日の昼まで何も食べられないくらい満腹になりました。

オースティンのレストラン事情を語ると、テキサスという土地柄、メキシコ料理店が多くあります。その他にもフレンチ料理、中華料理のチェーン店、タイ料理、寿司レストラン等、主だったジャンルは軒並みそろっていました。ただ、為替と物価の関係でどうしても1食当たりコストが高くつくため、昼食は簡単にパンとコーヒーだけで過ごしたりもしました。ちなみに、支払いはキャッシュレス化が進んでおり、現金を使う機会はほぼなかったです。

なお、オースティンはアメリカでも治安がいい都市らしいですが、とはいえ夜半の外出は推奨されません。Uber Eatsが使えるので近所の評判がいいハンガーガーショップにデリバリーを頼んだら、時間通りにハンバーガーとミネラルウォーターを持ってきてくれました(部屋の外に置き配してもらった)。味とボリュームには文句ないんですが、これで3,000円超えか…という衝撃はありました。思えば、それが今回の出張で最初に味わった「アメリカの物価高、ドル高の衝撃」だったかも。

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