今やクラウドコンピューティングは多くの企業にとって不可欠なインフラとなっており、特にアマゾン ウェブ サービス(AWS)は多岐にわたるセキュリティサービスを提供しています。
AWSの利用を検討している方の中には、セキュリティ面で不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。AWSのセキュリティに対する不安を払拭するために、まずAWSにはどのようなセキュリティサービスがあるのかを把握することをお勧めします。
本記事では、AWSが提供するセキュリティサービスの種類と、それらがどのように企業のクラウド環境を保護し、安全性を維持するのかを分かりやすく解説します。AWSの詳細を理解すると、AWSをさらに安心してご利用できます。
AWS のセキュリティサービスについて
AWSは、クラウド環境における安全性を確保するために、多数の包括的なセキュリティサービスとツールを提供しています。これにより、データ保護やアクセス制御、脅威の検出、コンプライアンス管理など、さまざまなセキュリティニーズに応えることが可能です。
例えば、AWS ShieldはDDoS攻撃からアプリケーションを保護し、自動で検出・緩和を行います。一方、Amazon GuardDutyはAIと機械学習を活用して、リアルタイムで不正な活動や脅威を検出します。
AWSのセキュリティサービスを活用することで、クラウド環境でのセキュリティ対策を強化し、企業のビジネス信頼性を向上させることができます。
AWSが提供する主な8種のセキュリティサービス
以下に、AWSが提供する8つの主要なセキュリティサービスを列挙します。これらのサービスは、それぞれ異なるセキュリティニーズを満たすために設計されており、総合的なセキュリティ対策を構築するために役立ちます。
1.AWS Network Firewall
AWS Network Firewallは、Amazon仮想プライベートクラウド(VPC)向けに脅威対策を容易に導入できるマネージド型のネットワークセキュリティサービスです。VPC内に配置することで、VPC内およびVPCとインターネット間のトラフィックを監視し、制御を行います。
AWS Network Firewallでは、ネットワークトラフィックをきめ細かく制御するファイアウォールルールを作成し、VPC全体に容易に適用できます。さらに、AWS Firewall Managerと連携して、ルールに基づいたポリシーを構築し、それらを仮想プライベートクラウド(VPC)とアカウント全体に一元的に適用できます。
AWS Network Firewallを利用し、高度なセキュリティ対策を行った事例もぜひご参考にしてください。
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2.AWS Shield
AWS Shieldは、DDoS(Distributed Denial of Service Attack)攻撃に対するマネージド型の保護サービスです。DDoS攻撃は、サーバーに大量の通信を送りつけてダウンさせるサイバー攻撃であり、複数のIPアドレスから攻撃されるため、単一のコンピューターから行うDoS攻撃よりも防御が難しくなります。
AWS Shieldは、アプリケーションのダウンタイムとレイテンシーを最小限に抑えるため、常時稼働の検出機能と自動インライン緩和策を提供します。レイテンシーとは、データの送受信にかかる遅延のことを指し、ユーザーがアプリケーションを使用する際に応答が遅くなることを意味します。DDoS攻撃が発生すると、サーバーの負荷が増加し、レイテンシーが悪化しやすくなりますが、AWS Shieldはその影響を最小限に抑えます。
AWS Shieldには、「AWS Shield Standard」と「AWS Shield Advanced」があります。それぞれの違いを、以下の表に整理しました。
比較項目 | AWS Shield Standard | AWS Shield Advanced |
---|---|---|
利用料金 | 無償 | 有償 (定額サブスクリプション費用 + データ転送使用料の従量課金あり) |
機能 | ・ネットワークフロー監視 ・DDoS攻撃対策 |
・ネットワークフロー監視 ・DDoS攻撃対策 ・ボリューム型攻撃対策 ・脆弱性の悪用を狙った攻撃対策 ・L7攻撃への対応 |
対応する層 | L3、L4 | L3、L4、L7 |
サポート | なし | ・AWS Shield Response Team (攻撃緩和、通知、分析、レポートの提供) ・AWS WAFの無償・無制限利用 |
3.AWS WAF(Web Application Firewall)
WAF(Web Application Firewall)は、Webアプリケーションの脆弱性を狙った攻撃(SQLインジェクションやXSSなど)からWebサイトを保護するためのセキュリティ対策です。AWS WAF は、AWSが提供するクラウド型のWAFです。以下のような特徴を持っています。
- ● Amazon CloudFront、ALB、API Gatewayと連携して動作
- ● リアルタイムのフィルタリングと自動化ルールでセキュリティ強化
- ● 一般的な攻撃シグネチャに基づく防御機能を備え、攻撃を未然に防ぐ
AWS WAFについてさらに詳しく知りたい方は以下の記事をご参考にしてください。
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4.Amazon Inspector
Amazon Inspectorは、AWSのEC2上にデプロイされたアプリケーションのセキュリティとコンプライアンスを向上させるための自動脆弱性診断サービスです。ソフトウェアの脆弱性や、ネットワーク内で意図せず公開されている情報がないかなど、AWSワークロードを継続的に診断します。
Amazon Inspectorを利用することで、AWS環境内の設定ミスや脆弱性を早期に発見し、迅速に対策を講じることが可能です。定期的なセキュリティスキャンを自動で行うため、手動チェックによる見逃しのリスクを軽減します。エージェントベースおよびAPI主導のサービスとして提供されており、デプロイや管理、自動化が容易に行えます。
例えば、Amazon InspectorはEC2インスタンスの脆弱性評価を自動化し、発見された問題に対して修正措置を提供します。結果はダッシュボードから一目で確認でき、具体的なアクションアイテムが提示されるため、状況の把握が容易になり、迅速かつ適切な対応を行うための情報が揃います。
このように、Amazon Inspectorを利用することで、AWS環境内のセキュリティ対策を自動化し、効率的かつ効果的に保護することができます。
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5.Amazon Macie
Amazon Macieは、機械学習とパターンマッチングを活用して、Amazon S3バケット内の機密データの検出、分類、保護を自動化するサービスです。企業が収集または保存する大量のデータには、個人情報や財務データなどの機密情報が多く含まれており、これらのデータ保護は非常に重要です。
Amazon Macieは、個人情報を含むS3オブジェクトを自動で検出・分類するため、大幅な作業負担をかけることなく、機密データを安全かつ効率的に管理できます。例えば、Amazon Macieはストレージ内のデータをスキャンし、クレジットカード情報や社会保障番号を自動的に識別し、保護の必要性を報告します。このように、機密データの自動分類と保護により、企業のデータセキュリティが向上し、コンプライアンス要件を満たすことができます。
さらに、Amazon Macieを利用する際には、リージョンごとに有効化が必要です。有効化されたリージョン内では、すべてのアカウントの検出結果を一元的に確認することが可能です。
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6.AWS CloudTrail
AWS CloudTrailは、AWSアカウントを作成した時点からすべてのユーザーアクティビティやAPI使用状況を記録するサービスです。このサービスを利用することで、AWSアカウント内の活動ログを一元管理でき、AWS環境での操作や変更の履歴を詳細に記録します。不正な操作や予期しない動作が発生した場合、その原因分析や修復に役立ちます。
AWS CloudTrailコンソールまたはAWS CLIにアクセスすると、過去90日間の操作記録を確認できますが、90日を過ぎると記録は削除されます。長期間の操作記録を保持したい場合は、Amazon S3に移動して保管が可能です。
AWS CloudTrailを活用することで、誰がいつ、どのリソースにアクセスし、どのようなアクションを行ったかを正確に追跡できます。これにより、不審な活動の早期発見やパフォーマンスの向上が期待できます。AWS CloudTrailを導入することで、セキュリティの強化と運用の効率化が図れます。
7.AWS Key Management Service(KMS)
AWS Key Management Service(KMS)は、クラウド上でのデータ暗号化と鍵管理を簡単に行うためのサービスです。AWS KMSを利用することで、高度なセキュリティ基準に従ってデータを暗号化でき、管理者は鍵のライフサイクル管理やアクセス制御を一元的に行うことが可能です。マスターキーはAWS KMS上で安全に保管され、ローカルには保存されないため、鍵の紛失や破損、情報漏洩の心配がないことが特徴です。
AWS KMSを活用することで、例えば企業が顧客データをS3バケットに保存する際に、データを暗号化する設定を容易に行うことができ、不正アクセスやデータ漏洩を防止します。
また、先述のAWS CloudTrailとも統合されており、誰がいつ、どのキーをどのリソースで使用したかを詳細に監査することが可能です。
AWS KMSは、クラウド上で安全かつ効率的にデータ保護を実現するための強力なサービスです。
8.Amazon GuardDuty
Amazon GuardDutyはフルマネージド型の脅威検出サービスです。機械学習を活用し、AWS環境で発生するセキュリティ脅威や異常な動作を自動で検出します。
GuardDutyを使用すれば、不正なログインや怪しい動きをすぐに検知し、管理者にアラートを通知します。これにより、危険な事態が発生する前に迅速な対策を講じることができ、被害を最小限に抑えることが可能です。また、複雑な設定やインストールは不要で、AWS上で「有効化」するだけで利用を開始できるため、AWS公式でもAmazon GuardDutyの有効化が推奨されています。
GuardDutyを導入することで、AWS上で稼働しているシステムの安全性が大幅に向上し、セキュリティリスクをしっかりと管理できるようになります。日常の管理業務においても、GuardDutyを活用すれば、安心してAWS環境を運用することが可能です。
まとめ
本記事では、AWSが提供する8つの主なセキュリティサービスについて説明しました。AWSのセキュリティサービスを活用して、クラウド環境の安全性を強化しましょう。自身のビジネスに合ったセキュリティサービスを選び、実装を始めることが重要です。
今後もAWSのセキュリティサービスは進化していくことが予想されます。定期的に最新のサービスやアップデート情報をチェックし、適切な対応策を講じることで、最新の脅威からビジネスを守れる可能性を高められます。
出典