近年、システム開発の現場では「サーバーレス」という概念が注目されています。その代表的なサービスがAWS Lambdaです。AWS Lambdaを使うと、サーバーを意識せずにコードを実行でき、シンプルかつ柔軟にアプリケーションを開発できます。
特に、Amazon S3(AWSが提供するクラウドストレージサービス)と組み合わせることで、画像や動画の自動処理、データ変換などの便利なワークフローを簡単に実現できます。例えば、S3にファイルをアップロードすると、それをトリガーにLambdaが動作し、自動でリサイズやフォーマット変換を行うことも可能です。
本記事では、AWS Lambdaの基本概念や仕組み、S3との連携方法を初心者向けにわかりやすく解説します。これからAWSを活用した開発を始める方や、AWS Lambdaに興味がある方はぜひ参考にしてください!
目次
- AWS Lambdaとは?基本の仕組みと特徴
- サーバーレスとは?
- AWS Lambdaの特徴
- AWS Lambdaのメリット・デメリット
- AWS LambdaとS3の連携
- S3のイベントを活用した自動処理
- まとめ・よくある質問(FAQ)
AWS Lambdaとは?基本の仕組みと特徴
AWS Lambdaとは、AWSが提供するFaaS※のサービスであり、クラウド上にプログラムを定義しておくことで、インターネットを通じてプログラムを実行できるサービスです。つまり、利用者側はプログラムコードを用意して、Lambdaに設定するだけでプログラムの実行が可能となります。
サーバーレスとは?
サーバーレス(Serverless)とは、開発者がサーバーの管理をすることなくアプリケーションを実行できるアーキテクチャです。通常のアプリケーション開発では、サーバーの構築・運用が必要です。しかし、サーバーレスを採用すると、クラウドサービスがサーバー管理を管理を自動で行ってくれるため、効率的なシステム開発が可能となります。
AWS Lambdaはサーバーレスの代表的なサービスの一つで、「特定のイベントが発生したときに、自動でコードを実行する」という仕組みを提供します。
AWS Lambdaは、以下のようなAWSの主要サービスと連携し、イベント駆動型で実行できます。
- Amazon S3にファイルがアップロードされたとき
- Amazon API Gateway経由でリクエストがあったとき
- Amazon DynamoDBのデータが更新されたとき
このように、イベント駆動型でプログラムを実行できるのが、AWS Lambdaの大きな特徴です。
AWS Lambdaの特徴
1.サポート言語
AWS Lambdaは、さまざまなランタイムを利用することで、複数のプログラミング言語をサポートしています。
2025年3月現在、Node.js、Python、Java、Rubyなどの主要な言語が利用可能です最新の対応言語やバージョンについては、AWS公式情報(Lambda ランタイム - AWS Lambda)をご確認ください。また、カスタムランタイムを使用すれば、ほぼあらゆる言語を実行することも可能です。
2.Lambdaレイヤー
共通のロジックやライブラリについては、Lambdaレイヤーとしてパッケージ化(zipファイルアーカイブ)して、複数のLambda関数で共有することができます。一つのLambda関数には最大5つまでのレイヤーを紐付けることができます。Lambda関数とレイヤーの解凍後の合計サイズが250MB以下となる必要があります。
3.オートスケーリング
AWS Lambdaは必要なときだけコードを実行し、リクエスト受信の回数に合わせて自動的にスケールします。これによりイベントの頻度が増加し負荷が増えても、安定した高いパフォーマンスが維持できます。
4.データベースとの連携
AWS LambdaはAmazon RDS(リレーショナルデータベース)やDynamoDB(NoSQLデータベース)と連携可能です。
AWS Lambdaのメリット・デメリット
メリット
- サーバー管理不要:インフラの運用を気にせず、コードの開発に集中できる
- 高速開発が可能:準備したコードをすぐに実行できる
- コスト最適化:リクエストが発生時のみ課金され、無駄なコストが発生しない
- スケーラビリティ:トラフィックに応じて自動的にスケールアップ・ダウン
- AWSのサービスとの連携が容易:S3やDynamoDBとシームレスに統合可能
デメリット
- コールドスタートの遅延:初回実行時に時間がかかることがある
- 実行時間の制限:最大15分までの実行時間制限がある
- 従量課金に注意:トリガーの発生頻度が多いと予想以上にコストがかかる可能性もある
AWS LambdaとS3の連携
AWS Lambdaは、Amazon S3と組み合わせることで、ファイルのアップロードや削除をトリガーにした自動処理を実現できます。これにより、データ処理の自動化やコンテンツ管理の効率化が可能になります。
S3のイベントを活用した自動処理
AWS Lambdaは、Amazon S3の「イベント通知」機能を利用して、特定のアクションが発生したときに自動的に処理を実行できます。
例えば、以下のようなS3のイベントが発生すると、それをトリガーにしてLambda関数が起動します。
S3イベントの種類 | Lambdaの活用例 |
---|---|
新しいファイルがアップロードされた | 画像のリサイズ、サムネイル作成 |
ファイルが削除された | データベースの更新、ログの保存 |
ファイルが変更された | テキストの解析、メタデータの更新 |
具体的な活用例
1.画像のリサイズを自動化
- ユーザーがS3に画像をアップロードすると、Lambdaが自動でリサイズし、別のS3バケットに保存する。
- これにより、開発者が手作業で画像を編集する必要がなくなり、システムが自動で適切なサイズの画像を生成できる。
- ユースケース:ECサイトの商品画像の最適化、SNSのプロフィール画像処理
2.動画のフォーマット変換
- アップロードされた動画をMP4形式に変換し、ストリーミングに最適化する。
- AWS Elemental MediaConvertと組み合わせることで、Lambdaを通じて高品質な動画変換が可能になる。
- ユースケース:動画共有サイト、オンライン学習プラットフォーム
3.ログの集計と解析
- S3に保存されたアクセスログを自動で解析し、必要な情報をDynamoDBやElasticsearchに格納する。
- Lambdaを使えば、手動でログをダウンロードして分析する手間を省ける。
- ユースケース:Webサイトのアクセス解析、不正アクセスの検知
S3とLambdaの連携の流れ
①S3のイベント通知を設定する
- S3バケットの「イベント通知」設定で、「新しいファイルがアップロードされたらLambdaを実行する」ように設定。
②Lambda関数を作成する
- Lambda関数を作成し、S3のイベントを受け取って処理できるようにする。
- 例えば、Python(Boto3)を使って画像をリサイズする関数を実装。
③処理結果を保存・活用する
- 画像なら別のS3バケットに保存、ログならDynamoDBに格納するなど、用途に応じてデータを活用。
このように、AWS LambdaとS3を連携させることで、手作業を減らし、自動で効率的にデータを処理することができます。
まとめ・よくある質問(FAQ)
本記事では、AWS Lambdaの基本概念やAmazon S3との連携について解説しました。AWS Lambdaはサーバーレスでスケーラブルなイベント駆動型の仕組みです。また、S3との連携により、画像処理やデータ変換の自動化が可能となり、運用コストの削減にもつながります。
以下に、関連するよくある質問をまとめました。
1.Q:AWS Lambdaの無料枠はどのくらい?
A:AWS Lambdaには、無料利用枠が用意されており、一定の範囲内であればコストをかけずに利用できます。
AWS Lambdaの無料枠(2025年3月現在)
- リクエスト数:100万リクエスト/月まで無料
- コンピューティング時間:40万GB-秒/月まで無料(GB-秒=メモリサイズ×実行時間)
AWS Lambdaの無料枠には以下の注意点があります。
- 12か月限定の無料枠ではなく、継続的に適用される
- →AWSの「Always Free(常に無料)」に該当するため、期間限定ではない
- データ転送や関連サービスは別途課金対象
- →Lambdaの無料枠には、S3へのデータ転送やDynamoDBの利用料金は含まれない
2.Q:S3との連携でよくあるエラーと対策
A:S3とAWS Lambdaを連携する際、以下のエラーが発生しやすいです。
エラー 原因 対策 AccessDenied IAMロールの権限不足 LambdaにS3への適切な権限を付与
(例 - S3:GetObject、S3:PutObject)Event Not Triggered S3イベントの設定ミス S3バケットの「イベント通知」が正しく設定されているか確認 Execution Timeout 処理時間が長すぎる LambdaにS3への適切な権限を付与
(例 - S3:GetObject、S3:PutObject)Payload Too Large S3からのデータが大きすぎる S3 Selectを活用して、処理前にデータをフィルタリング 問題が発生した場合は、CloudWatch Logsを確認し、詳細なエラー情報をチェックすると解決のヒントになります。
AWSの導入を検討中の方、または運用に課題をお持ちの方はお気軽にご相談ください。
出典
- AWS:
- AWS Lambdaのドキュメント
- レイヤーによる Lambda 依存関係の管理 – AWS Lambda
- Lambda ランタイム – AWS Lambda
- Lambda 関数のスケーリングについて – AWS Lambda
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