スポットインスタンスは、さまざまなインスタンスタイプが提供されているAmazon EC2の料金体系の一つです。
スポットインスタンスは未使用のEC2インスタンスを活用することにより、従来のオンデマンドインスタンスやリザーブドインスタンスと比べて利用料金を大幅に削減できる可能性があります。本記事では、そんなスポットインスタンスの仕組みを、解説いたします。
スポットインスタンスの特長
AWSは大量のリソースを保有していますが、それらがすべて利用されているわけではありません。スポットインスタンスはこの未使用のリソースを効率的に活用するために、提供されています。例えば、需要の比較的低い時期、あるいは特定の時間帯にだけ処理が必要な場合、スポットインスタンスを利用することでコストを大幅に抑えることが可能です。サーバーリソースを最適化しながら柔軟性を高めることができ、特に大量の計算リソースが必要な場合に非常に役立ちます。
スポットインスタンス vs オンデマンドインスタンス vs リザーブドインスタンス
Amazon EC2 インスタンスで比較されることの多い3つのタイプは、それぞれ特徴や利用シーンが異なります。
それぞれのインスタンスタイプの特徴と利用シーンを理解することで、適切なインスタンスを選択し、コスト効率を最大化できます。
スポットインスタンス
スポットインスタンスは、未使用のEC2キャパシティを利用するため、通常のオンデマンドインスタンス料金と比較して大幅に割安で提供されています。その反面、AWSの需要に応じて終了・停止・休止など、EC2インスタンスが中断される可能性があります。そのためシステムは、中断を許容できるワークロードである必要があります。
● ユースケース:中断されても問題ないデータ解析やバッチ処理、分散型のステートレスアプリケーションなど
オンデマンドインスタンス
必要なときにインスタンスを起動し、必要がなくなったら停止することで、柔軟にコンピューティングリソースを利用できます。またオンデマンドインスタンスの料金はクラウドの特長の一つである使用量分だけ支払う従量課金制のため、初期投資が不要で、予測できないトラフィックの増加や短期間のプロジェクトに適しています。
● ユースケース:Webサーバーのスパイク対応や一時的な開発環境の構築など
リザーブドインスタンス
1年または3年の長期契約を前提にしており、長期間にわたって安定して必要なコンピューティングリソースを確保できます。長期契約を行うことで、オンデマンドインスタンスと比較して大幅なコスト削減を実現できます。
● ユースケース:長期的なWebアプリケーションのホスティングや運用環境など
スポットインスタンスの料金と上限価格戦略
スポットインスタンスの料金は変動制であり、市場の需要と供給によってリアルタイムで価格が変わります。スポットインスタンスはAmazon EC2の未使用リソースを利用するため、供給が多く使用リソースの少ない場合に料金が下がります。半面、供給が少なく使用リソースの多い場合に料金が上がります。
例えば、深夜や休日などに使用するスポットインスタンスの料金は一般的に安くなる一方、平日の業務時間帯に料金が高騰することがよくあります。需要と供給のバランスにより、緩やかではありますが料金に変動があるため、気付いたら想定外の利用料金になっていた!というケースにならないよう、注意する必要があります。
そのため料金は利用時に支払可能な上限価格が設定可能です。この仕組みにより、設定価格を超過した場合にインスタンスが停止するため、価格は設定値を超過することなく抑制可能です。
スポットインスタンスのメリットと利用方法
Amazon EC2のスポットインスタンスは、コスト削減と柔軟性に定評があります。スポットインスタンスを利用することで、通常のオンデマンドインスタンスに比べて、最大約90%のコストを削減することが可能です。また柔軟性を大幅に向上させることができるのも、大きな魅力です。これらメリットを最大限に活用するための、具体的な利用シナリオを交えて紹介いたします。
コスト削減と柔軟性
必要に応じてインスタンスを起動・終了できるため、急なプロジェクトや変動するワークロードにも対応しやすいです。例えば、ビッグデータの分析や機械学習のトレーニングなど、計算量の多い作業でスポットインスタンスを利用することで、コストを抑えつつ高性能な計算リソースを柔軟に利用できます。またバッチ処理、開発とテスト環境の構築など、短期間で大量のリソースを必要とする作業にも適しています。
ユースケース
ビッグデータの分析
数時間や数日の間に大量のデータを処理する必要があるビックデータ分析は、スポットインスタンスを利用することによりオンデマンド料金よりも最大約90%のコスト削減が可能です。加えて、Amazon EMR(Elastic MapReduce)を使ったデータ分析で、HadoopやSparkのクラスターを簡単にセットアップできます。
バッチ処理タスク
定期的に実行されるが、即時性が求められない処理作業の場合、価格変動を許容することで大幅にコストを抑えることができます。必要に応じてインスタンスを自動的にスケールアウトし、処理が終わり次第停止できるので、柔軟にリソースを活用できます。
開発環境・テスト環境の構築
短期的な開発フェーズでは、低コストで複数のテスト環境を素早く準備できるため、リリース間隔を短縮することができます。そのため、利用者にとってシステムの頻繁なテストや迅速な開発が実現可能です。まとめ
Amazon EC2スポットインスタンスは、使用していないリソースを低コストで利用できる機能です。本機能を活用することで、コストを大幅に削減しつつシステムの柔軟性も向上させることができます。ぜひ、Amazon EC2スポットインスタンスの利点を自分のプロジェクトで試し、コスト削減とシステムの最適化を実現しましょう。
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