2024年7月、Googleは2024年末に予定していたサードパーティクッキー廃止計画を再度変更し、ユーザーの承諾があれば引き続きサードパーティクッキーの使用を継続できる方針を発表しました。 サードパーティクッキーは長年にわたり、ユーザーのブラウジング行動を追跡し、広告のターゲティングに活用されてきました。しかし、プライバシー保護の観点から、Apple社のSafariやMicrosoft社のEdgeをはじめ、多くのブラウザがサポートを段階的に終了しています。Google Chromeもその一つで、当初は2024年末に完全廃止される予定でしたが、最新の方針変更により、利用者の同意を前提にクッキーの使用が認められることとなりました。 この記事では、サードパーティクッキーの使用条件が変更された背景や、それがデジタルマーケティングに与える影響、そして企業がどのように適応すべきかについて解説します。マーケターや広告担当者が今後の変化にスムーズに対応できるよう、具体的な対策や最新のトレンドも紹介します。

Chromeのサードパーティクッキー廃止方針の背景と新たな展開

Googleはこれまで何度かサードパーティクッキー廃止の方針を発表してきましたが、広告業界への影響、代替技術の準備不足、規制当局との協議、ユーザー体験とプライバシーのバランスといった要因から、その計画は実現に至らず、今回も方針が転換されました。Googleのサードパーティクッキー廃止計画は段階的かつ慎重に進めざるを得ない状況にあります。しかし、これまでのGoogleの取り組み、他のブラウザの状況、そして世界的なプライバシー保護の動向から見ても、今回の方針変更は一時的なものである可能性が高く、長期的にはサードパーティクッキーの廃止に向けた準備が必要です。

企業やマーケティング担当者は、この変更に対応するために以下のような新しい戦略やテクノロジーを導入する必要があります。

• ・ファーストパーティクッキーの活用
• ・サーバーサイドトラッキング技術
• ・プライバシー保護技術の導入など

プライバシーに配慮しながらも、効果的な広告配信とマーケティングキャンペーンが可能となるであろうこれらの技術を、それぞれ確認します。

ファーストパーティクッキーの活用

サードパーティクッキー廃止後は、ファーストパーティクッキーの活用が重要になります。サードパーティクッキーの廃止に伴い多くのデータ収集方法が制限されるため、Webサイト運営者が直接収集できるファーストパーティクッキーに注目が集まっています。ファーストパーティクッキーは、ユーザーがWebサイトを訪問した際にWebサイト自体が発行するクッキーです。このクッキーを利用することでユーザーの行動を追跡し、Webサイトの改善やユーザー体験の向上が可能になります。

例えば、ECサイトではファーストパーティクッキーの活用することで、ユーザーの購買履歴や閲覧履歴を収集することができます。このデータをもとに、個々のユーザーに最適化された商品提案を行い、コンバージョン率（CVR）を向上させることが可能です。さらに、これらの情報をCRM（Customer Relationship Management：顧客関係管理）システムと連携させることで、ユーザーの興味関心に基づいたマーケティング施策の実施が可能です。マーケティングによく用いられるGoogle Analytics 4（GA4）は旧モデルであるユニバーサルアナリティクス（UA）よりもプライバシーに配慮した設計がなされており、主にファーストパーティクッキーを使用しています。そのため今後も安心して使える分析ツールのひとつといえるでしょう。GA4だけではなくファーストパーティクッキーを効果的に活用し、ユーザー情報を管理することが今後の鍵となります。

これら鍵になる5つの具体的な取り組みを次にあげます。

1. データ収集の透明性と許諾

ユーザーに対して、どのような情報を収集し、どのように使用するのかを明確に説明し、同意を得ることが重要です。

2. データのセキュリティ対策

収集したデータを適切に保護するためのセキュリティ対策を講じます。データの暗号化、アクセス制御の強化、プライバシーポリシーの実施などがあります。

3. データの最小化と匿名化

収集するデータ量を最小限に抑え、個人を特定できない形でのデータの取り扱いを検討します。匿名化または個人を特定できないようにする疑似匿名化を行うことでプライバシーを保護します。

4. ユーザーの選択肢の尊重

ユーザーがデータの収集や利用に関する選択権をもちます。必要時にオプトアウトの機会も提供します。

5. トラストシグナルの活用

ユーザーがWebサイトの信頼性を認識しやすくなるように、事業者情報やプライバシーポリシーの提供、Webサイトの常時SSL化、ISOなどの信頼できるセキュリティ調査機関により認定されたバッジや資格の公開を行います。

ファーストパーティクッキーで得られたデータを適切に管理し、十分なセキュリティ対策を講じることで、ユーザーの情報の安全性を確保しながら、マーケティングの成果を最大化させることが可能です。

サーバーサイドトラッキング

サーバーサイドトラッキングは、ユーザーの行動データをクライアント側ではなくサーバー側で収集し、処理する手法です。ブラウザの制限やアドブロッカーの影響を受けにくいため、より正確なデータ収集が可能です。例えば、ユーザーがWebサイトにアクセスした際、サーバーがユーザーの行動データをリアルタイムで収集し、分析することで、マーケティング戦略やWebサイト改善に役立てることができます。

より確実に把握できるユーザー行動

サーバーサイドトラッキングの導入によって、ユーザーの行動をより確実に把握できるので、マーケティング施策の効果が高まります。この手法はCRMシステムやデジタルマーケティングツールと連携することで、さらに詳細なターゲティング広告や顧客のニーズに応じたカスタマイズが可能です。結果として、リターゲティングやパーソナライズされた広告の精度も向上し、広告運用の効率化が実現します。

クライアントサイドトラッキングより高いセキュリティ

また、この手法はデータ保護の観点からも有利で、ブラウザ側でのCookie利用に比べてセキュリティリスクが低減されるというメリットもあります。個人情報保護法やGDPR（EU一般データ保護規則）に対応したデータ管理が求められる現代において、サーバーサイドトラッキングはそのニーズを満たす最適な手法として注目されています。

プライバシー強化技術の導入

企業はユーザーのプライバシーを守るため、プライバシー強化技術を導入する必要があります。サードパーティクッキーの廃止に伴い、新しいデータ収集方法は、より安全かつ信頼性が高い技術でなければならず、ユーザーのプライバシーを侵害しないデータ収集方法は企業の信用を保持するためにも重要です。例えば、データを匿名化することで特定の個人情報と結びつかなくなり、ユーザーのプライバシーが保護されます。また、データ暗号化技術も同様に有効です。データ暗号化技術を使えば、通信途上でデータ漏えいするリスクを大幅に低減できます。

プロキシサーバーによるセキュリティ強化

企業はプライバシー強化技術を導入して、ユーザーの信頼を獲得し続けることが重要です。特に、顧客データを扱うCRMシステムやECサイトなどでは、これらの技術を活用してユーザーに対するサービスの向上や広告運用の精度を高めることが可能です。例えばプロキシ（proxy：ネットワーク通信を代理で処理するサーバー）のセキュリティ強化技術を導入することにより、通信データの暗号化やアクセス管理を強化し、ユーザーの個人情報を保護できます。これにより、データの安全性を保ちつつ、リターゲティングやパーソナライズされた広告の効果も得られます。

ユーザーとの信頼関係を維持するためには、一時的な取り組みだけでなく、継続的なデータ保護対策と情報公開が不可欠です。企業がこのような取り組みを実施することで、ユーザーは安心してサービスを利用し続けることができ、結果として企業のブランド価値の向上やリターゲティング広告の効果測定の精度も向上します。

GoogleやAppleによる注目すべき新しい取り組み

現在のデジタルマーケティングの動向を鑑みると、大手パブリッシャーや各種プラットフォームがプライバシーに対する規制や対策を強化しているため、企業もこれに対応した技術導入が求められます。例えば、Googleが提案するサードパーティクッキーに代わる技術であるPrivacy Sandbox（プライバシー・サンドボックス）や、AppleのIntelligent Tracking Prevention（ITP：インテリジェント・トラッキング・プリベンション）などが注目されています。これらの動きに合わせて、自社のデータ管理・運用方法をアップデートし、今後もユーザーの信頼を維持しながらビジネスを展開していくことが不可欠です。

サードパーティクッキーの代替手段の現況

現在、多くのブラウザでサードパーティクッキーの廃止が進行中です。プライバシー保護の観点から、ユーザーのトラッキングを制限する動きが強化されているためです。例えば、SafariやFirefoxでは既にデフォルトでサードパーティクッキーをブロックする設定が導入されています。そのため、Webサイト運営者は最新のブラウザの仕様に対応する必要があります。サードパーティクッキーの廃止は、特にターゲティング広告やリマーケティングを行っている企業にとって大きな影響を及ぼします。したがって、Webサイト運営者はファーストパーティクッキーの利用やサーバーサイドトラッキングなど、サードパーティクッキーの代替となる手段の導入を検討しなければなりません。

継続的な情報収集が重要！

2024年末のサードパーティクッキーの廃止方針は見送りとなりましたが、長期的には廃止すると考えられます。これに対処するために企業はファーストパーティクッキーの利用やサーバーサイドトラッキング、プライバシー強化技術の導入を進める必要があります。従来のサードパーティクッキーに依存した戦略からの転換は避けられない状況となり、より効率的でプライバシー保護に配慮した新たなトラッキング方法の確立が求められています。

サードパーティクッキー廃止に備えて、自社Webサイトにおけるファーストパーティクッキーの適切な設定や、サーバーサイドトラッキングの導入、データ保護の観点からプライバシーポリシーの見直しなどの対策を早急に行うことが重要です。また、新たなトラッキング技術やマーケティング技術の利用を検討し、企業全体で連携して進めることが必要です。

今後のトラッキング技術の進化とともに、プライバシー保護とユーザーの利便性を両立させる新たな方法を模索することが求められます。GA4やその他の最新ツールを積極的に活用し、法規制や技術トレンドを常にキャッチアップすることが重要です。柔軟に対応しながら、効果的なデジタルマーケティング施策を実施していきましょう。企業のマーケティング担当者は、これらの対策を継続的に見直し、最適化することで、競争力を維持・向上させることができます。

出展

ウェブ向けプライバシーサンドボックスの新しいアプローチ

Chrome はサードパーティ Cookie のサポートを終了します

Chrome ブラウザでのサードパーティ Cookie の段階的廃止に向けた次のステップ

プライバシー サンドボックス

Chrome でのサードパーティ Cookie の段階的廃止に関する最新情報

New Privacy-Preserving Ads API coming to Microsoft Edge

オーディエンス ターゲティングに関する変更：Google 広告の類似ユーザー機能（別称「類似セグメント」）がサポートされなくなります

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