ベトナム・ハノイに本拠地を置くグローバルなシステム開発グループAHT TECH JSCの日本法人AHT JAPAN株式会社(以下AHT JAPAN)様とフューチャースピリッツは、2022年より、共同でグローバルなウェブサイト開発プロジェクトに取り組んでいます。
日本での市場シェアは小さいものの、世界的には著名なECサイト向けCMSであるMagentoと、その有償版であるAdobe Commerce。AHT JAPANはこれらを用いた高品質なWebサイト開発を受けられる国内でも希少な存在です。
AHT JAPANの立ち上げを行い、今は代表取締役社長を務める吉元 大様に、越境ECサイトの開発やベトナムのオフショア開発について聞いてきました。
日本貿易振興機構(以下JETRO)と神奈川県の支援を受けて、日本法人の設立の経緯
―吉元さんのこれまでのキャリアを教えてください。
吉元「もともとは、日本のIT企業で18年勤務していました。当時の主な業務は、SES営業や事業企画等でした。2018年頃、駐在していたハノイオフィスの取締役になったのですが、現地で知り合ったAHT TECHの人から『日本法人を立ち上げたい。力を貸してくれ』と頼まれまして、転職しました。
それで日本に戻り、JETROや神奈川県の支援を受けて、2021年4月にAHT Japanを設立しました。今は代表を務めております。ちなみに神奈川県の支援とは、セレクト神奈川NEXTという企業誘致施策です。」
―AHT TECHグループの成り立ちに関してお話しいただけますか。
吉元「グループとして立ち上がったのは、今から16年前です。グループ創業者は、以前はカナダでブリッジSEとして働いていました。代表は、MagentoがAdobeに買収されるより前からMagento関連のプロジェクトに関わっていました。」
―Magentoのいいところはどういうところですか。
吉元「OSSとして、それ単体でECサイトを作れることと、機能強化のためのエクステンションが多数そろっていることです。
日本ではスクラッチ開発(システムをイチから独自開発すること)やCMSに大きな改修をかけてECサイトを仕上げることが多いのですが、海外では既にあるCMSやエクステンションをベースにサイトを立ち上げることが多いです。テンプレートもそのまま使って、クイックにサイトを立ち上げる傾向があります。あまりカスタマイズをかけすぎると、事故が起こりやすいということもあります。
欧州では、Magentoとひとつのテンプレートを用いてサイトを立ち上げれば、そのまま近隣の複数の国に対してサービスを提供できます。」
国境を越えたECサイト構築・運用の強みとは
―AHTグループの強みは、どのようなところでしょうか。
吉元「ECサイト構築・運用が主力事業です。グループ全体で500人のスタッフがおり、チーム力を生かして簡単な制作からSIまで対応しています。主なプログラム言語としては、Java、PHP、JavaScript等の案件が多いと思います。
スマホアプリの実績も多いです。Flutterを使い、マルチOS対応アプリを作ったりしています。日本で受ける仕事だと、Objective-CでiOS Appだけ、ということもよくありますね。」
―iOSの頻繁なバージョンアップに対応していくのは、大変ではないですか?
吉元「一定バージョンまでの対応、という前提の下で、開発を進めています。逆にいうと、古いバージョンは非対応とすることをお客様に提案しています。OSの機能追加についていくのは、確かに大変なこともあります。」
―どういったエリアの顧客が多いのでしょうか。
吉元「グループとして顧客が多いのは、欧州です。業種でいうと、流通業やECサイト、総合商社、アパレル、医薬品といったところです。
OSSのERPパッケージであるOdooの導入も、グループとして強みを持っています。日本ではまだこれからですが、これから力を入れていきたいと思っています。」
―越境ECについての強みは何でしょうか。
吉元「多言語対応です。EU圏内のどの言語にも対応できます。
当社グループではサイトは作りますが、実際の品目を回す貿易部分は、パートナーに任せています。その延長上で、最近はマーケティングリサーチのお手伝いもするようになりました。リサーチの結果から、『ECサイトを作る』という選択肢が選ばれることもあるし、『商社につなぐ』となることもあります。ちなみに越境ECで人気のある商品というと、観葉植物やギフト等です。」
―当社のAdobe Commerce案件へのご協力ありがとうございます。
吉元「プロジェクト開始時の情報共有が綿密だったので、体制を組みやすかったです。オフショア開発では、何といってもコミュニケーションが課題なのですが、その点でフューチャースピリッツさんとの仕事はうまくいっています。問題があればすぐに連絡を取り合えますし、月例会も開催していますし、マスタスケジュールを参照しやすい体制になっていますから。」
―当社への注文はありますか?
吉元「特にないです(笑)。フューチャースピリッツさんとの仕事は、SEと直接連携できるので、少し楽させてもらっています。ハノイにも来てもらいましたよね。それでお互いの人となりを知ることができたのも、とてもよかったです。」
ベトナムのオフショア開発における成功の鍵と注意点とは
―あれはいい出張でした(笑)。ところで、ハノイの観光PRをお願いします
吉元「ホアンキエム湖の散策ですかね。旧市街も見どころが多くあります。もし1日の観光する時間があるなら、ニンビン省にツアーで行ってみてください。バイディン寺とかチャンアンとか、正直ハロン湾よりお勧めです。」
―仕事をしていて、日本とベトナムの違いを感じるのはどういうところですか?
吉元「だいたい2ヶ月に1回、2週間くらいベトナムに行っています。日越比較してみると日本の自治体や大学は閉鎖的な印象で、アポイントメントを取ってお会いしても仕事が進みにくいのですが、ベトナムだと自治体も大学もオープンに接してきます。相性さえ合えば、物事が一気呵成に進みます。『ちょうどイベントをやっているけど、参加しない?』って。
ベトナムの企業の採用って、縁故が結構強いです。社長がOBになっている大学からの採用が多くなりがちです。また、新しい企業に関心を持つ学生も多いです。そういう新興企業を自分の力で大きくしたい!という気持ちを持ってくれます。」
―ベトナムのオフショア開発において、注意しなければならないことを教えて下さい。
吉元「まずは、まめなコミュニケーションが必要です。日本のテレワークでさえ、コミュニケーションには気を付けないと破綻するじゃないですか。いわんやオフショア開発をや、です。それに、当初はうまくいっていても、リーダーが替わるようなタイミングにリスクが顕在化することがあります。そういう時に備えて、メンバーのスキルの確認をしっかりして、ちゃんとチームと話をしていくことが重要です。オフショア開発チームでは、コーダーとテスターは役割を明確に分けています。少なくとも最初のうちは、コードもテスト結果もちゃんと確認した方がいいじゃないかと思います。
当社の強みは、コミュニケーターとブリッジSEと開発者がワンパッケージとなって、ベトナム人だけで開発を進められるようにしていることです。チームでしっかり二人三脚しています。
よく、オフショア開発の文脈で、ベトナムとインドは比較されることがあります。インド人は頭がいいし、高い技術力を有しています。英語を使ったコミュニケーションにも、一日の長はありますよね。だから欧米に対して営業攻勢をかけています。一方ベトナムのオフショア開発は、日本語コミュニケーションでしっかり作り込むことにかけては決して負けませんよ!」
DXとAI技術を駆使した新たなビジネスを展開したい
―最近のWeb業界の動きや新技術の中で、特に注目しているものは何ですか。
吉元「これはベトナム人に限らないかもしれませんが、うちのエンジニアは総じて新しいものが好きです。流行りものが好き、ともいえるかも。NFTが流行すれば検証するし、Deep Learningが目立ってくれば手を出します。Chat GPTでアプリを作り、出力された日本語の検証を依頼されたりしています。AHT TECHはトレーニングセンターを持っており、そこでさまざまなトレーニングを行っています。」
―今後の事業戦略の中核はどういうところでしょうか。
吉元「DXに、引き続き専念していきます。AIも注目していますが、まだまだデータ整備はこれからというところです。メディテックに目を向けてみても、電子カルテや診療予約システムだけでは、DXではないです。データを整備し、機械学習を行って、どのように診療に生かしていくか、というところが重要です。当社だけでは医療行為はもちろんできませんので、医療系企業とパートナーシップを組んで進めていこうと思っています。」
―最後に、今後のフューチャースピリッツとの関係についてどう考えていますか。
吉元「引き続き、お互いに利益を与えあえる互恵関係でありたいと願っています。グローバルECや海外事業系の相談ももらっていますので、一緒に事業を開発し、高難度な開発プロジェクトに取り組んでいけると嬉しいです。」
当社としても今後、AHT JAPAN様と一緒にプロジェクトを取り組むことを期待しております。本日はありがとうございました!
パートナー制度について詳しい情報はこちらから
パートナー様概要 | |
会社名 | AHT JAPAN株式会社 |
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所在地 | 神奈川県川崎市高津区 |
URL | https://www.arrowhitech.jp/ |
事業内容 | ・ITコンサルティングサービス ・カスタマー・エクスペリエンス (CX) ・デジタルトランスフォーメーション (DX) ・コマースソリューションコンサルティング |