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2024.11.21

さくらのクラウド

さくらのクラウド活用入門(中・パブリッククラウド選定のポイント)

クラウドインテグレーション事業本部の神戸です。
前の記事では、「さくらのクラウド構築・運用パック」を念頭に、ウェブサイトのインフラを用意する際の流れを、さくらのクラウドを中心に説明しました。
今回は、「結局、どのクラウドサービスを使うべきか?」について、まとめます。ただ、先にお伝えすると、「どんな時でもこのサービス一択!」という絶対的な答えはありません。こういう基準で考えるといいですよ、というご提案になります。

さくらのクラウド構築運用パック

どういう選択肢があるの?

ウェブサイトやシステムを搭載し、運用するためのパブリッククラウド。
総務省の令和5年版情報通信白書において、「世界のパブリッククラウドサービス市場のシェア」に名前の出てくる運営企業は、11社です。

総務省の令和5年版情報通信白書において、「世界のパブリッククラウドサービス市場のシェア」に名前の出てくる運営企業の円グラフ

これら企業が運営するサービスとさくらのクラウドが、本邦でクラウドを選定する際の主要なオプションになるといって良いでしょう。Alibabaやそのほかの中国系クラウドは、日本ほか世界各地にリージョンを持っていますが、フューチャースピリッツでは専ら中国本土や香港でサイト運営をしたい方向けの選択肢としています。
ここでは、さくらのクラウドとAWSに対象を絞り、この2択だったらどっちがいい?という観点で考えてみます。

どういう選定基準を持つべきか?

後日後悔しない選定をするためには、調達の観点と技術仕様の観点、それぞれを持つことが重要です。
そうはいっても、やはり料金が最も気になるという方は多いでしょう。「さくらのクラウドとAWSは、どっちが安いの?」と聞かれることは、とても多くあります。AWSの代わりにAzureだったり、さくらのクラウドの代わりにフューチャースピリッツのホスティングサーバーだったりすることも。
この質問はいわばFAQ(Frequently Asked Question)ですが、答えは簡単にはまとめられません。
たとえば「東京リージョンでCPU1コア、メモリ1GBのコンピューティングリソースを使いたい」という場合、単純計算すると下表のようになります。

商品名 さくらの
クラウド
AWS
サービス名
及び仕様
東京第1ゾーン サーバー
1仮想コア・1GB
t2.micro 東京リージョン Linux
1仮想コア・1GB
概算月額費用
(税込)
1,760円 1,926円
(12.04ドルを160円/ドルで円換算)
価格表 https://cloud.sakura.ad.jp/products/server/ https://aws.amazon.com/jp/ec2/pricing/on-demand/
備考1 - Reserved InstanceやSavings Plansの適用なし。データ転送量にかかる費用も含めていない
備考2 各社サーバーは「1仮想コア、1GB」という点で同一だが、厳密な意味で「同一スペック」ではない

ただし、AWSには一定期間分の利用を予約することで3割以上の値引きを受けられるサービスがありますし、AWSは米ドルで計算された利用料に対して為替が適用されるため、為替変動によって請求される金額が変わります。その点、さくらのクラウドは円建てで費用算定されるため、為替の影響は受けません。
また、AWSはデータ転送量に対する課金がある一方、さくらのクラウドではサーバーを使うだけならデータ転送量に対する課金がありません。
利用するOSやミドルウェアによっても、単価が変わってくる場合があります。
このように、クラウドの価格シミュレーションは非常に複雑で、ぱっと見の単価だけでは高い/安いの判断がつかないのです。しいていうなら、さくらのクラウドの方がある程度コストを抑えた提案を作りやすい、とまではいえるかもしれません。それでも、Reserved InstanceやSavings Plansといった割引サービス、各種ファンドを活用することで、AWSの利用料も節減することができます。加えて、AWSにあってさくらのクラウドにない強い優位性を持ったサービスもあるため、費用を度外視してもAWSを選ばざるを得ないケースもあります。
また「国産クラウド」という点に価値を見出す方もいます。グローバル企業にはAWSの方が圧倒的に知られており、AWSはGDPR準拠を公式に謳っています。こうした技術要件とは異なる付加価値も、選定の際の基準にはなり得ます。
なお、いずれのサービスも、充実したサポート体制を提供しています。外資系とはいえ、AWSも非常に手厚い日本語サポートを提供しています。ただし、細かなやり取りやドキュメントの読解において、英語での対応や英文の読解が必要となる頻度は、さくらのクラウドより高いと言えるでしょう。

比較表を作ってみた

このように、掲題の「パブリッククラウド選定のポイント」は、到底一筋縄ではいかない難しいテーマです。
それでも、ウェブサイトやシステムに関わっていくと、不可避的にこのテーマと向き合う場面が出てきます。かつ、その時の条件次第で、最適解は異なってきます。
パブリッククラウド選定に当たっては、フューチャースピリッツの率直な意見としては、「ぜひ当社の経験豊かなチームに話を聞かせていただいて、精緻で詳細なご提案をさせていただきたい!」です。フューチャースピリッツのクラウドインフラ構築提案は、(1)構成図案、(2)利用料シミュレーション、(3)御見積書の3点セットを無料で作成、ご提示しています。提案内容の説明会も、ご要望とあれば実施します。納得感のある形で選定を進めるためのお手伝いを、喜んでさせていただきます。
――というセールストークで終わっても、それこそ納得いただけないですよね。そこで、ひとつの目安として、あるシステム開発案件のインフラとしてさくらのクラウドとAWSのどちらを選ぶのが適当か、考えるための比較表を作ってみます。下の表で、項目毎に、さくらのクラウドとAWSに、下記の記号を割り当てています。

選定基準 選定理由 さくらの
クラウド
AWS
費用:
為替の影響
為替の影響を受けずに費用を支払えるのは、さくらのクラウドのメリット
費用:
従量課金
データ転送量を気にせずにインフラを使いたい場合、さくらのクラウドにアドバンテージあり。従量課金の要素が比較的少ないため、将来の利用料の見通しを立てやすい
費用:
割引サービス
割引サービスのラインナップは、AWSの方が多岐に渡る。一方で、さくらのクラウドでは一定期間無料トライアルを利用可能
費用:
支払い方法
大きな違いは、ほとんどない。どちらも直接契約をする場合は、請求書払いよりもクレジットカード払いが推奨されている。ただし、利用料支払い代行サービスを利用すれば、請求書払いも可能
ネットワーク:
グローバルネットワーク
日本国外にもユーザーのいるグローバルな環境を作る場合、全世界にアベイラビリティゾーンのあるAWSに優位性あり
ネットワーク:
メール
メールサーバーとしての取り扱いやすさは、さくらのクラウドを推したい。SendGridも利用可
ネットワーク:
拡張性と柔軟性
よほど大規模なネットワークを構築する場合でない限り、適切に設計された構成であれば、拡張性(スケーラビリティ)や柔軟性(エラスティシティ)に大きな優劣はつかない
サービス:
サーバレス開発
サーバレス開発を行う場合、AWS Lambdaほか様々なサービスを有しているAWSに優位性あり
ソフトウェア:
CMS
一般的なCMSの利用においては、それほど優越はつかない
ソフトウェア:
マーケットプレイス
サードパーティが作ったパッケージやソリューションを多数販売するマーケットプレイスを有していることは、AWSの優位性
セキュリティ:
ネットワークセキュリティ
セキュリティツールはいずれのクラウドでもそろっているが、さくらのクラウドはWAF標準装備
サポート:
日本語対応
通常のサポートは、どちらのサービスもおおむね品質の差異はない。込み入った内容になってくると、AWSは一定の英語力が必要になる場合がある
その他:
資格
ベンダー資格はどちらも運営しているが、グローバルな認知や参考書の充実といった観点では、AWSに一日の長あり
その他:
ブランドナショナリティ
国産クラウドとして、日本国内にデータ基盤を有していることに安心感を持つのであれば、さくらのクラウドを選択することを推奨する

総じて、国内向けのウェブサイトで比較的規模が小さい構成を作る場合、さくらのクラウドの優位性を生かしやすいといえます。AWSはよくも悪くもグローバルなサービスですので、とりわけサービス仕様において、日本向けにローカライズされたものはあまりありません(主要なサービスはあらかた邦訳されてはいます)。
また、AWS向けに特化したサードパーティツールはたくさん存在するものの、さくらのクラウドに特化したものはそれほど多くはありません。しかし、日本での利用に適したサービスは十分に用意されているため、かえって選択に困らずに済むともいえます。

まとめ

「国内向けのウェブサイトで比較的規模が小さい構成を作る場合、さくらのクラウドの優位性を生かしやすい」と、少し前に書きました。
「比較的規模が小さい構成」は定性的な表現であり、サーバーの台数やPV数等で定量的に基準を作ることは現実的には困難を伴います。あえていえば、ウェブサーバー1~2台構成の簡易的なウェブサイトで突発的なトラフィックスパイクがそれほど想定されないものなら、さくらのクラウドの適用が適している場合が多いといえます。
今後、ホスティングサーバーからパブリッククラウドへの移転、いわゆるクラウドリフトが世界的に進んでいくことが予想されています。これは大規模システムに限った話ではなく、シンプルなコーポレートサイトやサービスサイトにも同様に変革の時期がやってきます。
その時に、どのパブリッククラウドを選ぶことがベストなのか――。前述のような観点でご件ご検討頂ければと思います。お悩みごとがございましたら、ぜひ当社にご相談ください!

今回の記事は以上です。次回テーマは「費用についての基本的な考え方」です。今回も少し書きましたが、クラウドサービスのコストシミュレーションは考える要素が無数にあります。具体的な数字を示しながら、説明させていただきます。

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